アンドロイド・ニューワールドⅡ
ようやく、私は奏さんが何を言っているのか把握しました。

行かないと言いましたよね?このまま卒業まで、星屑学園に通い続けると。

何故?

何故そうなるのですか?

「何を言っているのですか、奏さん…」

「転校はしない。引っ越しもしない。俺はここにいるよ」

と、奏さんはきっぱりと言いました。

迷いのない口調で。

「どうして…何故ですか?だって、奏さんにとっては…奏さんにとって幸せな選択は…」

と、私は言いました。

どう考えても、奏さんは叔母夫婦に引き取られた方が、幸せになれるでしょうに。

どうして、その話を断って…。

…はっ。

もしかして。

「…私のせいですか?私が下らない我儘を言ったせいで、奏さんが…」

と、私は聞きました。

もしそうだとしたら、私は大罪人です。

奏さんが幸福になれる道を、私の我儘で潰してしまった。

親友のすることではありません。

しかし。

「いいや、そうじゃない。瑠璃華さんの言葉が決め手になったのは、確かにそうだけど」

と、奏さんは言いました。

やっぱり、私のせいなのですね。

「でも、それだけじゃない。元々俺は、本当に叔母さんの申し出を受けるか、ずっと悩んでたんだ」

「…悩んで…?どうして悩むのですか?」

「新しい環境に変えたからって、今より良くなるとは限らないでしょ。それに、俺を引き取るって、簡単に言ってはいるけど…本当に引き取られたら、叔母さんの家族に、たくさん迷惑をかけることになるし」

と、奏さんは言いました。

迷惑…ですか。

確かに、奏さんは身体的な障害がある訳ですから。

何処で暮らすにしても、誰かしら、介助をして下さる方が必要です。

「無償で叔母さんに介助してもらうなんて、申し訳ないからね。それだったら、施設の人に、仕事として介助してもらう方が、気持ちは楽だよ」

と、奏さんは言いました。

家族に介護してもらうより、仕事で介護をしている介護士に介護してもらう方が、気兼ねをしなくて楽。

そのような意見があることには、納得します。

人によっては、そのように考える方もいるでしょうね。

「叔母さんにも子供がいるんだし、その子達に迷惑をかけたくもないし…」

「ですが…」

「…それに、転校先が今より良い学校かなんて、誰にも分からないじゃん?」

と、奏さんは微笑みながら言いました。

「この星屑学園だって、入学する前は色の良いことしか言わなかったよ。バリアフリーは完備してるし、エレベーターもあるから、心配しないで入学してください、とか言ってたし」

と、奏さんは言いました。

確かにエレベーターはありますね。片方故障してますけど。

一応、間違ったことは言っていません。

実際のイメージとは異なる場合があります、というテロップ付きですが。
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