アンドロイド・ニューワールドⅡ
次の月曜日。

いつも通り、昼休みに琥珀さんがやって来ました。

そんな琥珀さんに。

「琥珀さんのクラスは、遠足の行き先もう決まった?」

と、奏さんは尋ねました。

学年とクラスが違えば、遠足の行き先も当然違いますから。

琥珀さんも、私達とはまた別の場所に行くのでしょうね。

南極大陸でしょうか?

「はい、先週決まりました」

と、琥珀さんは答えました。

「そっか。何処になったの?」

「市外のさつまいも農家で、芋掘り体験です」

と、琥珀さんは言いました。

成程、そう来ましたか。

図らずも我々は、お互い秋の実りを楽しむことになるようですね。

良いことです。

久露花局長が喜びそうですね。

基本的には、チョコレートに夢中な久露花局長ですが。

甘い物なら、何でも好きですから。

当然、桃を使ったデザートも、さつまいもを使ったデザートも、久露花局長の守備範囲内です。

「それにしても、芋掘りですか…」

「はい、芋掘りです」

と、琥珀さんは再度繰り返しました。

「楽しそうだね、良かったね琥珀さ、」

と、奏さんは笑顔で言いかけましたが。

「非常に難度の高いミッションです」

と、琥珀さんは大真面目に言いました。

はい。

私も、そう思います。

「…何で?」

と、奏さんは聞きました。

「芋掘り…それは、地中奥深くに生息する植物を、地上に掘り出す土木作業です」

と、琥珀さんは説明しました。

私も、そう思います。

「そして、土木作業は常に、事故が隣り合わせです。生半可な気持ちで臨むと、大怪我をするでしょう。…私は『新世界アンドロイド』ですから、滅多なことでは怪我をしませんが」

と、琥珀さんは言いました。

「まず、鎌、鍬、ピッケルの用意は必須ですね」

「勿論です。更に、地面が硬かったときに備えて、アースドリル、電動穴あけ機器の類も持参した方が良いでしょう」

と、琥珀さんは言いました。

さすが琥珀さん。何を用意すれば良いか、よく分かっていらっしゃいます。

備えあれば憂いなし、ですね。

しかし。

「…成程。さすが従姉妹…考えることが見事に一緒で、むしろあっぱれだよ…」

と、奏さんは遠い目で呟いていました。

遠い目モードを頂きました。

ありがとうございます。

しかも、あっぱれだと褒めて頂きました。

ますます、ありがとうございます。

「それから、まずは根を枯らしてから収穫する為に、ポリタンクに除草剤を入れて携帯しようかと…」

「うん、農家さんに大迷惑だから。二人共、二人共手ぶらで行くということを学ぼうね。お願いだから」

と、奏さんは。

にっこり微笑んで、そう言いました。

人を威圧する笑顔でした。

奏さんにここまで言われては、仕方がないので。

私も琥珀さんも、渋々手ぶらで遠足に行くことを承知しました。

何だか不安が募りますが、本当に大丈夫でしょうか?
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