望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「旦那様、私は先に戻りますので」

「ああ、わかった」

「旦那様。どうかこの国を、正しい道へとお導きくださいませ」

 くるりと後ろを向いて、そのバルコニーからふわりと飛び降りる。文字通りにふわりと。浮遊の魔法を使って。
 彼女は一体、何を考えているのだろうか。


 レイモンドが先ほどの部屋へと戻ると、意外にもあの王太子が指揮を執り、そこに居た人々を奮い立たせていた。妻を失ったばかりだというのに、この冷静な判断と行動力には驚かされるものがある。

「レイモンド」
 王太子が団長である彼の名を呼ぶ。

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