望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
「あの、その。兄さんとそのようなことを致したのですか?」

「はい?」
 多分、彼が言いたいことは初夜のことだろう。

「いえ、あの。兄さんはあなたとの間に子を為すつもりはないと、はっきり言っていたのに。その、そういった関係を持ったのかと思いまして」

 カレンは表情を崩さずに一口お茶を飲んだ。
「どこからそのようなお話を」

「朝から、噂になっております。その、使用人たちの間で。彼らの幾人かは義姉さんのことを好いていますから。そういうことを望んでいる人たちもいます

「私が彼らに良い印象を持たれているのも、アディのおかげですね」
 カレンは目尻を下げた。だがすぐにその表情を戻し「形だけでも必要なときがあるのです」
 言うと、再びカップに口をつけた。

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