望まれぬ花嫁は祖国に復讐を誓う
8.吐露
 カレンは豹を胸に抱いて、また二階のバルコニーへと飛んだ。この浮遊の魔法は、二、三階の高さであれば簡単に行き来ができるから非常に便利だ。
 部屋へ戻ったカレンは大きなバスタオルを床に敷いて、そこにその豹をおろした。先ほどは暗くてわからなかったが、やはり怪我をしているようだ。後ろ脚に切り傷、そして肩の部分は大きくえぐられて肉が見えている。だれがこのようなことをやったのか。いつの時代もどこの国にも、人と違うものを排除しようとする傾向があるのか。

 カレンは自分の寝間着が汚れるのも構わず、その豹の汚れている部分を拭き、肩の部分にはタオルをあてがった。
 少しその豹の顔が歪んだように見えたのは、やはり痛みを感じているからだろうか。

「誰にやられたの? 酷い人間がいるものね」
 ため息とともにその言葉を吐いた。

「この怪我だと、一度に治すのは無理ね」
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