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「俺に、それが何か関係あるのですか?」


もしかしたら、武田蒼を殺害したとして、上杉朱が疑われている?


頭の中が色々な予測で混乱して、蒼君の手を握る手に力が入る。

怖い。



「発見されたその白骨遺体なのですが、
一緒に埋められていた衣服等から身元は特定出来なかったのですが」


その、蒼君のものだと特定されなかった事に安堵はするが、なら、何故と、さらに分からなくなる。


「ご遺体の歯の治療痕から。厳密に言いますと、歯を1本インプラントにされていて。
そのインプラントがS社のものでして、シリアルナンバーが記載されていました」


自分の心臓が、大きな音を立てている。


冷や汗も、全身から出ている。



「そのシリアルナンバーから、そのご遺体が上杉朱さんではないか?と行き着きました。
ただ、上杉朱さんは特に行方不明等の届け出も出されず、現に普段通り生活をされている。
血縁者とのDNA鑑定から、遺体を上杉朱さんのものなのか特定する案が出たのですが。
上杉朱さんは、今のご両親は養父母のようで。
そして、本当のご両親は亡くなっていました。
そして、双子の弟が居るみたいなのですが、
その弟さん、現在行方知れずになっているそうです」


警察の人達は、もう殆ど分かっている。


蒼君が、上杉朱を殺して入れ替わっているのだと。


「―――そうです。
俺が朱を…」


「蒼君!!」


蒼君の言葉を遮ると同時に、私はその手を引き、走り出した。


それは、全速力で。


蒼君は、罪を認めようとしていた。


もし、蒼君が捕まったら、また私は蒼君を失ってしまう。


それが怖くて、私は蒼君の手を引き、その警察達から逃げた。


蒼君も、初めは戸惑っていたが、すぐに私と同じように全速力で走ってくれた。






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