シンガポール・スリング
・・・・・

優美は家に帰るなり、息子ウェイ・リンとその妻シャン・ウーを呼び出した。

「お帰り、母さん」

「私がここに帰って来るまでの間に、とんでもないことが起きてしまったようだけど、知っていることをすべて話してちょうだい」

「母さん・・・」

「だって、レンはシンガポールで恋に落ちたのよ。それなのにいったい何が原因で、昔のレンに戻ってしまったっていうの!」

「母さん、レンはもう大人なんです」

「お母様、私達が口出しすることではありませんわ」

「いいえ、口出しさせていただきます」

優美はぴしゃりと二人に言い放った。

「あなたのことだから、未希子さんのことも調べたんでしょう?」

「・・・・・」

「どう思ったの?何かレンに言ったの?もしかして、未希子さんに何か・・・」

「そんなことするはずがないでしょう。シャンも言ったようにあいつはもういい大人だ。それでも数回あのカフェに行き、彼女がどんどん痩せていくのを見て、レンに忠告した。自分がしたのはそれだけですよ」

「未希子さんをほったらかしてたこと?」

「それもそうですが、インターネットに出ていた記事、見ていないんですか?」

「??・・・何の記事のことを言っているの?」

優美はシンガポールで買い物やらお友達とのお茶会には出席したものの、特に孫に関するゴシップは聞かなかった気がする。

「マスコミにシュンリンと一緒にいるところを写真に撮られ、結婚秒読みだと書かれたんです」

「!?・・・でもシュンリンにはフィアンセが・・・」

「ええ。相手にとっても迷惑な話でしょうが、とりあえずその写真がここ2週間ほどインターネット上に出回っていたんです」

「まぁ・・・・なんてこと」

「おそらく、彼女はその記事を見て勘違いしていると」

優美は唇を嚙み、頭痛が起きないようこめかみ辺りを指でほぐしだした。

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