シンガポール・スリング
9

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未希子がカフェに復帰できたのはそれから二日後だった。

その間、レンから朝・昼・夜と確認のテキストが来て、その度に‟大丈夫です。ありがとうございます”と返事を返していたが、それ以外特に何も聞かれることはなく、未希子からも何かメッセージを送ることはなかった。

何度か会いたいとも言われたが、お互い会える時間がなかなか合わなくて、ズルズルと来てしまっている。しかし今回は見放されたという感覚は湧いてこなかった。それはひとえにレンが忙しい仕事の合間を縫ってメッセージを送り、未希子にレンの存在を感じさせてくれているからだった。と同時にレンの仕事が本当に分刻みに進んでいるほど忙しいという事実を知り、病院で寝泊まりするためにどれだけの犠牲を払っていたかを考えると、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

未希子を立ち直らせるために山瀬も大きく貢献した。
カフェでの仕事を少しずつ復帰できるよう配慮し、2週間後には完全復帰できるまでになった。心配だった瀬尾もかなり手際よくなってきて、未希子のサポートに入ってくれている。
退院後の経過も良好で、処方された薬をあと1ヶ月は飲み続けなければならなかったが、自身でもわかるほど、最近は調子も良くなってきている。


そんな土曜日の朝、未希子はレンから今日も仕事だというテキストを受け取った。頑張ってくださいと返信した後、お弁当を作ってあげるのはどうだろうとふと思い立った。

手料理を食べたいと言っていた。

家に招待して夕食を一緒に食べるなんていうのはかなりハードルの高いことだが、お弁当を作って届けることはできる気がする。
お互いの時間を見つけることは無理だけど、レンだってご飯を食べなければならない。
入院中もかなりお世話になったし。
未希子はすぐにエプロンを付け、冷蔵庫からお弁当のおかずになるようなものを取り出し始めた。作り始めるとレンにあれこれ食べさせてあげたくなり、かなりの量になってしまったが、なんとか全てをタッパーに詰めることができたので、未希子はAWC本社へと向かった。

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