シンガポール・スリング
11

・・・・・・・・・・

髪の毛を何度も梳かれる感触で目が覚めた未希子はレンの柔らかなまなざしが自分に降り注いでいることに気づいた。
彼の左手は未希子の腰をゆっくりと上下させながら肌の感触を楽しんでいて、右手は未希子の枕となっていながら、手だけが何度も未希子の髪を梳くってはさらっとシーツに落としていた。

「良く寝れた?」

「すみません。ぐっすり寝ちゃいました」

いいよ。初めてで疲れただろうし。デリバリーを頼んだんだ。
未希子の唇を優しくつまむようにキスする。いつ起きるかわからなかったから、寿司にした。いい?と聞かれ小さく頷く。

「明日、どこかに出かけないか?」

日本で一緒に出掛けたことないだろ?遠くに行けないが、どこか近場で。どう?

レンの甘さに未希子は酔いそうになる。

レンは返事を待たずにシーツごと未希子を抱き上げるとリビングに連れて行った。横抱きにしてリビングに座ると、明日も一緒にいてくれるだろう?と不安そうに聞く。

そんなレンに対して嫌と言えるわけがなかった。

デリバリーと言いながらもびっくりするぐらい美味しい寿司を食べた後、レンはキッチンに行って緑茶を淹れた。
いつかここで未希子のコーヒーを淹れてほしいんだと照れながら言うレンを何だか無性に抱きしめたくなった。
明日でよければ入れますよと返す未希子にレンは微妙な顔をして、明日は無理じゃないかなと言葉を濁した。

「とりあえず、今日はうちに泊まっていって。未希子の服は洗濯に出してあるから、明日届き次第、未希子の家に行こう」

レンが明日の説明をしながら、未希子を引き寄せるとまた唇にキスをする。

「未希子が家にいてくれるなんて、夢みたいで何度でも確かめたくなる」

「そんな、大げさな」

「大げさなんかじゃない」

レンは真面目な顔で未希子を見つめた。

「シンガポールにいる間、帰国できなくて気が狂いそうだった。自分の不甲斐なさに頭に来て、辺りに当たり散らしていた」

まぁ・・・

「何度も何度も未希子と朝を迎える夢を見たんだ」

< 85 / 108 >

この作品をシェア

pagetop