不器用主人の心は娘のもの
 秘密を打ち明けることも出来ない自分。もう何も言うことができなかった。

 せめて慰めてやりたい、彼女に本当の理由が分からずとも。

 彼は昔一度だけ記憶にある、自分が幼い頃泣いていたときにしてもらった方法を試すことにした。
 それに食事を早くさせてやれば、彼女は笑ってくれると思った。

 ここにはコリーンが置いたのだろう、娘用の敷物もちょうどある。

 彼はすぐさま立ち上がり、そばにあった敷物の前に彼女の食事を置き、靴を後ろに置いて敷物に座り込んだ。

「食事を摂れ」

「え…」

 彼女はようやく顔を上げる。

「聞こえなかったのか?食事を摂れ、ここでだ」

 彼は自分の膝の上を指し示す。
 彼女は戸惑い、

「で、でも…」

と縮こまり言う。
 このままではらちも明かず、なおさら食事を摂らなくなってしまうかもしれない。

「…私の命令が、聞けないか」

 彼は焦り、彼女の腕を強く引いて自分のかいた│胡座《あぐら》に座らせた。

「きゃ!!」

 ようやく座り震えている彼女も、自分を見つめている『執事長』に従いようやく食事を始める。

「…良い子だ…」

 彼は一度だけ彼女の頭を優しく撫でた。
 それは彼女に笑ってほしい一心。

 しかし、彼の行為に振り返った娘は今にも泣き出しそうな表情だった。

(…どうしたら、笑ってくれる…?)

 これは今まで自分が人を遠ざけ続けてきた結果であり、人を慰めるすべが分からないせい。
 ギクシャクとした雰囲気の中、彼女の食事は続いたのだった。
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