不器用主人の心は娘のもの

※ おまけ 彼のちょっとした秘密1ページめ

 今日はメイドのばあやに、エイミの犬のぬいぐるみ『リュカ』を補強してもらうことになった。

「御主人様も、この子を優しく扱ってあげて下さいませね」

 持ってきた椅子に座りぬいぐるみを見てやりながら、ばあやは彼に穏やかに言う。

「あぁ」

 仮面の着けていない彼はそう返しながら、床の広い敷物に座り、ニコニコしながらばあやのそばにいるエイミを見つめていた。

「そういえば懐かしいわねえ。よくエイミがしているのは、御主人様がお教えしたのかしら?」

「…はい??」

 エイミは何を言われたのか分からず聞き返す。

「エイミはよく、リュカを膝に乗せているでしょう?そのことよ」

「!!」

 彼はそれを聞き、嫌な予感がした。

 そんな彼をよそにばあやは楽しげに続ける。

「昔、一度だけ御主人様はエイミのしているようにしてもらっていたの。…もちろんこれは、エイミにだから教えてあげるのよ?」

 ないしょ話よ、と付け加えたばあやの言葉に、エイミは顔をほころばせて喜んだ。

「わあ、はい!」

「…。」

 彼は、しまった、と思った。

 いつもなら口が堅いばあや。
 しかし無邪気なエイミを愛らしく思った彼女は、エイミに思い出話を聞かせてやりたいと思ったのかもしれない。

「御主人様、お父さんかお母さんの膝に乗せてもらったんですね!?」

 ばあやから聞いたエイミはキラキラと目を輝かせて彼にそう尋ねる。

 黙り込む彼の代わりに、ばあやはニコリと笑ったままエイミに言った。

「バラド様ですよ」
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