不器用主人の心は娘のもの

違う姿で

 朝がやってくる。


 娘の様子を見なければ。
 若干の罪の意識と、まだ自分の中では分からない彼女への好奇心。

 彼は早る気持ちを抑えながら食事を摂り終えた。

「コリーン、日中はあの怯えた子犬の見張りを続けろ。世話も継続だ。良いな」

 主人姿の彼は食事の片付けに来たコリーンにそう命ずると、彼女はすぐに何のことかを察したらしい。

 コリーンは目を細めて嬉しそうに微笑んだ。

「光栄ですわ御主人様。喜んで…!」

 今までコリーンがこれほど無邪気な笑みを見せたことがあっただろうか?
 いつも含み笑うような表情を浮かべるコリーンの、初めて見る純粋な笑みに見えた。


 執事の姿に着替え、いよいよあの娘との会って二度目の対面。
 まだ自分はまともに彼女の顔を見られていない。そう考えるとなぜか胸が高鳴った。
 それにしばらく屋敷に置くのだから、自分も彼女の対応に慣れなければいけない。

 コリーンにはすでに伝えてあり、自分は娘の様子を見る。ただそれだけ。

 彼は彼女のいる部屋へ足を進めた。
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