せ ん にゅ う
「はあ、はあ、追いついたあ」

今、廊下を10メートル走ったくらいだよね?

なんか息あがってるよ、この子は。

『カッコいい』より断然『かわいい』って感じのマリが、ピンクの封筒をあたしに差し出してくる。

「はいこれ、ユリちゃんに」

「えっ、あたしにラブレター?」

「ええっ、違うよー」

そんなことわかってますけどね、マリをからかうとおもしろいから。

マリは真剣な顔で言った。

「おんなじ委員の人にお願いされたの。ユリちゃんに、これを綾南高校バスケ部の、奈木くんって人に届けてほしいって」

「あー、やっぱまた綾南かぁ、人気だねー、綾南~」

「そりゃあー、この辺り一番のイケメン揃いな男子校だもん♪」

きゃあー、と顔を赤らめるマリの彼氏も、その綾南だ。

ちなみに、その時のキューピッドを務めたのもあたし。

あたしが綾南男子高校に潜入して、見事にマリのラブレターを届けたから成就した恋だ。

まあそれ以来……

あたしンとこにはマリ経由で、ラブレターを届けてほしい! っていう依頼がよく来るようになったんだよね。
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