結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 革張りのオフィスチェアに座る彼に、凛音は動揺を隠しきれない声で尋ねた。

「他人の縁談の話をするのに、わざわざお前を呼びつける必要はないだろう」

 たしかにそのとおりなのだが……縁談、当然その先には結婚があるのだろう。恋人もいた経験のない凛音には想像すら難しい。

 華奢すぎる身体をライトグレーの夏用スーツに包み、栗色のロングヘアは黒いシュシュでポニーテールにまとめている。水無月シッピングに入社して二年が経つが、二十四歳という実年齢より若く見られがちな彼女にOLファッションはあまり似合っていない。

 凛音の反応を待たずに、龍一は続ける。

「ひと月前に、うちの新クルーズ事業のプレスリリースパーティーがあっただろ。その招待客でもあった菱木銀行頭取の長男だ。家柄のいいお坊ちゃんだが、自分でIT関連の会社を立ちあげている実業家でもある」

 龍一のエスコートで参加した、パーティーの夜のことを凛音は思い出す。

 大勢いる招待客のなかでも、若い実業家たちの姿は特に目立った。龍一は凛音に彼らを紹介してくれたが、人数が多すぎてひとりひとりの顔までは覚えていない。
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