結ばれないはずが、冷徹御曹司の独占愛で赤ちゃんを授かりました
 ゆうべの龍一を思い出し、凛音はかすかに眉根を寄せた。

 うれしくなかったと言えば、嘘になる。たとえ、あの言葉が子どもへの責任感から出たものだったとしても、それでもうれしかったのだ。

『愛している』

 龍一の口から紡がれた言葉に、凛音の胸はうち震えた。もし万が一、それが彼の本心なら……本当に夢のようだと思う。

 けれど、それと彼を受け入れることはまったくの別問題だ。互いの感情がどうあっても、ふたりが義兄妹だという事実は変わらない。

 法的なことはわからないが、世間は龍一をどう思うだろう。メディアにもたくさん露出している彼は広く顔と名前を知られている。この情報社会で、おもしろおかしく揶揄されたりしないだろうか。

(会社での立場だって……)

 龍一は有能な経営者で社員たちはみな彼を敬愛している。だが、そんな彼の足を引っ張り、トップの椅子を奪いたいと思っている人間も当然いるだろう。

 龍一が積みあげ、勝ち取ってきたものの重さを、この十年間そばで見てきた凛音はよく知っている。

 ふいに、ゆうべの彼の言葉が蘇った。

『すべてを捨てても』
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