隣の席に座るヤンキー男子の癖は甘噛みです


 授業の合間の休み時間も、彼は口を噤んだまま。

 昼休みだって、お弁当のおかずを取っていこうとする気配はない。


 放課後は、何も言わずに帰宅してしまった。


「どうして、こんなことに……」


 下校の時間帯、教室を出て行くクラスメイトの背中を私は見つめてる。

 人影の無い教室、みんな帰路について私一人だけ。

 顔をうつむかせ、前髪で表情を隠したまま自分の席に座ってる。


 思い返せば、この教室のクラスメイトで会話をしてるのって……

 隣に座る、ヤンキー男子の若林くんだけ。


 彼の可愛い癖を、自分だけのものにしようなんて舞い上がってたかもしれない。

 誰にも見つからないようにしてれば、私だけ幸せな気分になれるって……

 思い込んでいた……


 彼の癖が、気づかれなくて良かった。

 でも、私は彼の寝顔を見つめる気持ち悪い人あつかい……



 誰とも会話をしない、寂しい学校生活が明日から始まろうとしてる。



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