孤高の脳外科医は初恋妻をこの手に堕とす~契約離婚するはずが、容赦なく愛されました~
「ふ、んんっ……」


口内を蹂躙され、逃げ惑う舌を喉の奥まで追い詰められて、呆気なく搦め捕られる。
多分キスも……クリスマス、私が初めてだったはず。
だけど、驚くほど巧みな舌遣いに翻弄される。


無意識の抵抗で彼の胸に置いた両手が、カタカタと震えた。
頭では、霧生君が求める結婚継続もその理由も、おかしいとわかっている。
なのに、こんなに熱く唇を貪られたら、なにも考えられなくなってしまう――。


「ん、霧生、く……」


私の腕から力が抜け、ぐったりしたのに気付いたのか、霧生君の方から唇を離した。


「……はっ」


彼もやや呼吸を乱し、小さな吐息を漏らす。
微かな息に唇をくすぐられる感触にも、私の身体はビクンと反応した。
霧生君は、私にコツンと額をぶつけて……。


「茅萱さん。……霞」


目蓋に、こめかみに、鼻に……跳ねるようなキスを落としながら、私を名前で呼んだ。
なによりも先に、心臓がドキンと跳ね上がって反応する。
それを知ってか知らずか。


「君は僕のものだ。霞」


霧生君は私の首筋に顔を埋め、熱く火照った耳に濡れた唇を掠めながら、私の名を呼ぶ声を鼓膜に直接刻みつけた。
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