婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
「蛍さん、本当に覚えてないの?」

「全く記憶にございません」

「じゃあどういう経緯でそうなったのか説明するから、思い出してね?」

「ちょっと待ってください! それは、父が聞いても大丈夫な話ですかね?」

「さぁ、それはどうだろう?」

もしお父さんに話せないような内容だったら困るし、一度ストップをかける。

僕とワンナイトした時に結婚を迫られました、なんて言われたらたまったもんじゃない。

ワンナイトなんかしてないけども!!

「蛍、お前もしかして⋯」

「お父さんが想像してるようなことはしてないからッ!」

「蛍さん、1週間前くらいにCHERRY BLOSSOMっていうバーにいただろ?」

「たしかにいたけど、1人で飲んでたわよ」

「その時、蛍さんは泥酔しちゃって僕がホテルに運んだんだよ」

「なんでホテル!?」

「だって、バーの床に転がしておくわけにもいかないだろう?」

それはそうかもしれないけど、何か別の方法があったんじゃないかって思わずにはいられない。

そもそも泥酔した私が一番悪いんだけども!

ていうか、泥酔するほど飲んだ記憶がない。

あ、でも、次の日起きたら知らない男の人隣にいたかなぁ、なんちゃって。
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