婚約破棄を希望していたのに、彼を愛してしまいました。
高峰蛍、実は先程から起きております。

目の前には夫とその弟がいて、自分たちのご両親のお話をされてます。

いや起きてますッ!

聞いちゃだめな話かもとか思って寝たふりしてるけど、起きてますッ!

せめてどっちかは私が起きてることに気づいて。

「蛍もよく寝るなぁ⋯」

「そりゃあ、あんだけ飲めばな。見事に酔いつぶれてる」

いやだから、起きてますッ!

「蛍は、俺にもったいないくらいの素敵な女性だ。今まで結婚していなかったことが奇跡でしかない」

「兄さん、蛍にベタ惚れだもんね」

「まぁな、蛍は気がついてないみたいだけど、俺の愛は相当なもんだよ」

今度は私のことについて話し始め、ますます起きづらくなってきた。

やばい、どのタイミングで起きてるって言うか悩む。

とりあえず今は気まずいし、もう少し寝たフリしておこう。

「俺さ、次のパーティー欠席するから」

「お前、自分だけ逃げるのはずるいぞ。俺だって参加したくないのに」

「兄さんは参加しなきゃダメでしょ。蛍と結婚したこと、公の場でまだ公表してないんだから」

え、ちょっと待ってよ。

私、次のパーティーで智明と結婚しましたってみんなの前で公表されるの!?

智明には不釣り合いだとかって、めっちゃ辛辣なこと言われそうだし、行きたくないよ。
< 85 / 146 >

この作品をシェア

pagetop