"密"な契約は"蜜"な束縛へと変化する
「貴方がちゃんと捕まえておかないから、私と萌実さんの大切な日に彼女が割り込んできてたんですからね! しっかりして下さい!」

秋吾さんは初対面の彼氏さんに向かってそう告げて、

「それから貴方も! 同性だからって、萌実さんの胸を触ったり腕を絡めたり、私達の大切な日にするべきじゃないでしょう、そんなことは!」

と告げて怒りを露わにしていた。私達は呆気に取られ、ひたすらに謝る。秋吾さんだって、カフェに行った時に一人の世界に浸っていたけれど、私と奏さんが話し込んでいたからかも。

「それにね、分かるんですよ、貴方が私を蔑んで見ていたこと。私が気に入らないから、萌実さんを味方につけた。貴方は周りから囲っていくタイプですね!」

エスカレートしてきた秋吾さんはとんでもないことを言い始めた。夕食時、たしなむ程度に飲んだ日本酒のせいだろうか?

「とにかく、貴方はこの人をきちんと見張ってて下さいね! では、失礼致します!」

秋吾さんは私の手を強引に引き、部屋へと向かう。私は振りほどく理由もないので、そのまま着いて行く。

部屋に入ると「温泉に入りましょう」と私を貸し切り風呂に誘って上着を脱いだ。

「秋吾さん……、ごめんなさい。大切な日だって分かってますけど、奏さんのことも放っておけなくて……」

「えぇ、知ってますよ。萌実さんの性格上、放っておけないことは。でも、奏さんにはどうしても近付いて欲しくないんです。彼女は霧矢奏といいます」
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