婚約破棄から始まる恋2~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
ローラの笑顔が見たい。ローラの声を聞きたい。ローラを抱きしめたい。代わりにクッションを抱きしめてしまった。
クッションはクッション。ローラのような温もりはない。ローラの甘い香りが恋しい。
虚しさが胸に広がってさらに落ち込んでしまう。
「まあ、よいですが。それよりも見事にどんよりと曇っておりますなぁ」
「曇り?」
外? 雲が多い空ではあるけれど、どんよりとはしていない。雲間の陰から太陽も出ている。曇りとまではいかない天気だ。
「天気ではありませんよ。ここの空気のことです」
外を眺めていた俺にセバスがきっぱりと告げる。
「正確に言うと殿下の周りだけですが」
「ほっといてくれ」
珍しく絡んでくるセバスを一瞥するとソファに寝転んだ。
プロポーズを断られた日からぱったりと途絶えた宮への訪問。手紙のやり取りも謝罪と共にやんわりと断られてしまった。そのため、ローラと接触する機会がなくなってしまった。