囚われの令嬢と仮面の男
5.罪悪感と男の正体

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「ねぇ。前から気になってたんだけど。その手の模様って生まれつきなの?」

 一日のうちで、たった数十分だけ外へ抜け出して遊ぶ日々のなか。私は草花を器用に編むイブの左手を指さしていた。

「そうだよ。赤ちゃんのころからあったんだって。お母さんが言ってた。金魚みたいだろ?」

「うん。なんか、綺麗だね」

 左手の甲にある模様は、薄い褐色のあざだ。その形はイブの言う通りで、大きな尾びれをふわりと水中に漂わせて泳ぐ、金魚に似ていた。

 私はそれをイブにしかないトレードマークだと思っていた。

 イブはよく笑う男の子だった。背は確かに私より高かったけれど、顔立ちは幼くて同い年ぐらいに見えた。

 ぱっちりとした二重の目が綺麗で、涙袋まである。大きな瞳から女の子みたいだと思ったことすらあった。

「ほら、できたよ」

 湖のほとりでイブが被せてくれた草花の冠を見つめ、幸せな気持ちになった。

「わたしにも作り方をおしえて?」

「いいよ」

 そのころ、ミューレン家の屋敷には幼い妹と弟がいたから、後妻として入ったお母様も使用人たちも育児に忙しく、私を気に掛けている余裕はなかった。
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