彼がデキ婚するので家出をしたらイケメン上司に拾われました。
<穏やかな日々>
「どうしたの?」

『あのね、悠也さんと結婚することになった』

へ?そうなの?どうしてそうなった?って思うけど二人とはもう関わり合いたくないからサラッと済ませよう。

「そう」

『ごめんね』

ごめんね?迷惑をかけてごめんねってこと?まさか私の婚約者だった人を奪ってと言う意味だったら・・・

「それって、どう言う意味の“ごめんね”なの?」

『その、お姉ちゃんがなる筈だった幸せを奪ったから』

頭上でカチンと音が鳴った。
「別に、悠也と別れたくらいで不幸になってないし。朱夏に憐れに思われるところは1nanoもないから安心して。私はてっきり、たくさんの人に迷惑をかけた事にごめんねって言ったのかと思ったわ」

『そうだよね』

「結婚おめでとう、じゃあね」

『あ、あのね。来年の春、大学を卒業したら入籍しようって。学費とか今までありがとう、ちゃんと返すから』

「私に返す前に慰謝料を返しなさいよ、じゃあね」

通話ボタンを切ってため息をつく。
結局、人間の本質なんて変わらない。
悠也もなんだかんだ言って朱夏を気に入っていたってことなんだろうか、今更どうでもいい。

茶の間に戻ろうとドアに手を掛けようとしたが、昌希も誰かと電話中のようだ、入っていいのか躊躇していると話が聞こえてきた。

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