桜が咲く前に



思っていたよりも近くて、瞳の中に映った私でさえも見えてしまうような距離。




伸びてきた手が頬を撫でるから、私もほんの少しその手に擦り合わせる。




千紘先輩は首を傾けて距離を詰める。




最近読んだ漫画に同じようなシーンがあったのを思い出した。




頬には斜線が描かれていて、目を合わせて、閉じて、それから……





それから?





…これ、今からなにするの?






「ち、ひろ先輩…ちゅーするの?」




「あ…っぶな…」




頭と頭がぶつかって二人とも顔を歪ませる。




え、痛い…もしかしてこの人加減を知らない…?




ズキズキした痛みを感じている間に、千紘先輩はテーブルに置いてあるグラスの水を空にした。





「こうなってもいいって言うなら隣に座る」



「…ソファーに戻ってください」




告白どころじゃなかった日。


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