桜が咲く前に
「――ちひろ先輩、好きです」
「…は」
声が震えて、細くて、あんまり上手く伝えられなかった。でも千紘先輩には聞こえてる。今まで見たことないくらいびっくりした顔してるもん。
余裕の無さそうな顔を手で隠して、さくらんぼの飴ごと私の手を力無く握った。
「式終わったら教室行く」
「…わかりました」
「手が冷たい、雪触ってるみてえ。もう少し着込みなさい。
使いかけだけど、あげる。」
有無を言わさず私のポケットに入れたのは、ホッカイロとまだ開けていないホットミルクティだった。
千紘先輩は後ろを振り返って、同じ二組の人が来ているのを見てはけようとした。
けれど、手が離れる直前。
私を引き寄せるようにして口を開いた。
「断るわけないけど、二人きりの時に言いたい。だから不安がらなくていいよ。
…今度はするから、準備しといて」