成人女性

映画という芸術

 近頃、「ファスト映画」というものが若者を中心に視聴されている。
 これは動画プラットフォームで配信されている、映画の内容全体を短い一本の動画にまとめたものであるが、所謂「ネタバレ」も含んでおり著作権法に抵触する。
 私も市井(しせい)に漂う「若者」の一人だが、どうもこの「ファスト映画」の良さが分からない。
 同年代の方々は「映画館に行かなくても映画の内容が大体分かるから」だとか、「結局見たいのは結末だけだから、それさえ分かれば良い」というメリットを見出しているようだが、私にとってはただの「法律違反」にしか見えない。
 私の場合、曲がりなりにも法律を(かじ)っている人間なので、悪意で、つまり法律違反だと知っていながらそのような動画を見るという行為は法律以前に私の感情が許さないのである。
 一体いつから映画は「そのようなもの」になってしまったのだろうか。

 私は現代の映画が好きでない。
 特に現代の邦画が好きでない。
 洋画も大して差はないが、邦画よりは幾分か良作が多いように思える。
 私にとって今の邦画は空虚なものに見えてしまっている。
 裏を返せば、私は古い映画が大好きだ。
 フィルム、トーキー、サイレント。
 古い映画、しかも日本の映画が大好きである。
 戦前から黄金期あたりの映画をよく見ているが、当時の映画は現在の映画とは一線を画している。
 まさに「画を映した」、「映画」そのものであり、監督をはじめとする映画の制作に携わる人々の意気を感じる。
 見せられている感覚が全くないほど、その世界観にのめり込むことができる。
 「見せられている」のではなく、「魅せられている」のだ。
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