婚約者の執愛
「律希様」
『ん?』
「好きです」

『………』

「あの…」

“どうしました?”
山野がまた文字を見せてくる。
舞凛は、ゆっくり首を傾げた。

「律希様。
えーと、また講義終わったら連絡しますね」
『もう一回』
「え?」

『もう一回、言って?
舞凛が不意に言う“好き”って言葉。
その言葉だけで、僕は生きていける』

舞凛は律希の言葉に、胸がドキンと鳴った。

律希は本当に純粋だ。

「律希様、好きです」
『うん!僕も大好き!
また、後でね!』

通話を切り、ふぅーと息をはいた。

「舞凛様、大丈夫ですか?」
「あ、はい。
なんか……ちょっと、罪悪感というか……」
「え?」
「私、今山野さんに言われて“好きです”って言ったのに、律希様はとても素直に喜ばれてたから……」

「そうですね。
あの恐ろしさがなければ、律希様ほど純粋な方はいないかもしれませんね」

「はい」

「……………でも律希様は、舞凛様をあのマンションに閉じ込めて監禁したいと思ってます」

「え?」

「律希様、言ってました━━━━━」

『みんな宝物を箱にしまって、誰にも見せないように鍵をかけるでしょ?
それと同じだよ。
僕の宝物が“舞凛”なだけ。
舞凛をあのマンションに閉じ込めて、鍵をかけて大切に囲いたいんだ。
誰だって、宝物を勝手に見られたくないでしょ?
だから、舞凛を見るなって言ってるの!
宝物を触られたくないでしょ?
だから、舞凛を触るなって言ってるの。
そんなに舞凛を“自由にしろ”って言うなら、僕がみんなの宝物を壊すよ?
あーそうだなぁ。
みんな、スマホ依存になってるよね?最近の世の中。
情報をみーんな、スマホから得てる。
で!スマホにロックかけてるよね?
あれって、勝手に他人に見られないようにでしょ?
それは許されて、なんで舞凛を監禁するのはダメなの?
おかしくない?』

「━━━━━って、言ってました。
舞凛様とスマホを同等に扱うのは、失礼な話ですよね。舞凛様は、意思をもった人間。
でも……律希様の言ってること、わからなくはないなって。
律希様はただ、舞凛様が好きで大切なだけなんだと思います」

「はい」

「大学にいる間だけでも、できる限り舞凛様が“自由”に出きるように努めます。
なので、どうか…
理不尽なことを言ってるのは、百も承知です。
律希様を怒られることだけは………!」

「わかってます。大丈夫ですよ。
確かに窮屈ではありますが、私は律希様を嫌いではないです。嫌じゃないというか……
なんだかんだで、ドキドキする時があるし……
どちらにしても、こんなに思ってくれる方を無下にはできません」

舞凛は、真っ直ぐ山野を見て答えたのだった。
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