婚約者の執愛
今、両手をベッドに縫いつけられている舞凛。

「舞凛、早く言って?」
「ほんとに、ただボーッとしてただけです」

「そんなわけない。
今まで舞凛が、僕の話を聞いてないなんてなかった。
僕の機嫌を損ねないように気をつけてた舞凛が、初めて心ここにあらずだった。
ねぇ!
そこまで気をつけてた舞凛の心を奪ったモノは何なの?
ねぇ!ねぇ!ねぇ!!
舞凛は、僕のこと“だけを”考えないとダメなんだよ?」

「はい…」

「早く言って!
僕、これ以上ないくらい嫉妬してる!
しかも、目に見えないモノに!
この頭の中に、僕以外の何があるの!?
舞凛は僕だけのモノなのに、何で!!
壊れそうなの!!
頭が痛い!!息が上手くできない!!
助けて、舞凛!!」

「………高校の時の先輩にたまたま会って、懐かしくて、少し話したかったなぁって考えてただけです」
「先輩?
まさか……男?」
「え……は、はい…」

「男……男…」
「律希…様…?」
「この目に、僕以外の男が映った。
この耳に、僕以外の男の声が入った。
舞凛の綺麗な声を、僕以外の男が聞いた」

律希の手が目、耳、首をなぞり、服のボタンにかかる。

「んんっ…」
「ねぇ……その人に触られた?」
舞凛は、首を横に振る。

「そう……」
ゆっくり、組み敷いていた舞凛から下りた律希。

「律希様…」
舞凛もゆっくり起き上がる。
そして、律希の顔を覗き込んだ。

「舞凛」
「え?」

「本当は、僕のことどう思ってるの?」

「え……?」

「僕は、舞凛のこと大好き!
どうしようもなく、大好き。
何を犠牲にしても舞凛が欲しい。
舞凛がいれば何もいらない。本当に、そう思ってる」

「好き……です」

「ほんとに?」

「はい。本当です」

「じゃあ……証明してもらおうかな?」

「え━━━━━」
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