鳥籠の姫
初めての自由と募る想い
男性の名前は、小花井篤人(こはないあつと)と言う。美桜の手のひらにあるチョコレートがチロルチョコと言い、一つ十円で買えてしまうチョコレート駄菓子であると教えてくれた後、自己紹介をしてくれた。

「チロルチョコを知らない人なんて、初めて見たなぁ」

「駄菓子を食べるなって言われてきましたから……」

美桜が口にするものは、両親や香音人によって管理されてきた。ジャンクフードや駄菓子は太ってしまう、体に悪いと言われ続け、美桜が食べることを許されたのは専属シェフやパティシエが作る料理やスイーツ、そして香音人が連れて行ってくれた高級フレンチやイタリアン、料亭などの料理である。

「あ〜……。だったら、チロルチョコは食べられない?別のものにした方がいい?」

篤人が少し考えてから言い、美桜は慌てて首を横に振る。

「いえ。チロルチョコ、食べてみたかったんです」

美桜は包み紙をゆっくりと開き、現れた小さなチョコレートを口の中に入れる。歯でゆっくりと噛むと、生クリームの味が口の中に広がっていく。
< 23 / 42 >

この作品をシェア

pagetop