赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


「仕事相手にしては匡さんの雰囲気が柔らかかったから、恋人なんだろうなって思ってたんですけど……あれ。これって言っちゃいけない系の話でした?」

作業を止めて不安そうに私に視線を移した相葉くんは、私の表情を見るなり「あ、やっぱり?」と苦笑いを浮かべるので、その反応で自分自身が情けない顔をしていたのだと気付いた。

「ううん……大丈夫。仕方ないよ。匡さんモテるし、今までずっと恋人がいなかったなんてありえないもん」

キスの仕方だとかベッドの上でのことを考えれば、経験豊富なのは誰でもわかる。
すべてにおいて匡さんが初体験だった私がわかるのだ。

匡さん、慣れてるんだな、と思って、でもそんな複雑な思いを上塗りするくらい毎晩大事に丁寧に触れてくれるからすっかり忘れていたけれど……匡さんに恋人がいてそういうことをしていたのは疑いようのない事実だった。

でも、昔のことだ。今それを悲しく思ったところで変えられるわけでもないのだから仕方がない。

すぐに割り切って、それでも胸に残ろうとするもやもやした感情をため息で逃がそうとして……失敗した。


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