赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました

「ここで終わらせたいのならそういう顔はやめろ」
「す、すみません……」

どんな顔だかはわからないけれど、さっきにやけて相当締まりのない顔をしていた自覚はあるので謝る。

そんな私をひとしきり見ていた匡さんは、私の髪をひと掬い指先にとりいじりながら「今月末」と切り出した。

「美織の実家に行こうと思っている。たまには里美さんに元気な顔を見せてやった方がいい。今月末の土曜日なら里美さんの都合もいいそうだ」
「え……いいんですか? 嬉しいです」

電話やメッセージはしていても、やっぱり直接顔を見て話したい気持ちは常にあったので喜ぶと、匡さんが少し考えた後、口を開く。

「手土産は、ケーキと……あと、バウムクーヘンが好きだったな。バウムクーヘンは適当なものを取り寄せておく。ケーキは途中で買えばいい。他に希望は?」
「いえ。それだけあれば大丈夫です。母は、三食それでいいって言うくらいバウムクーヘンが好きなので……でもきっと、匡さんにも勧めてきますよ」

母は、自分が美味しいと思ったら、人にも勧めて共感を得たい傾向にある。

だからきっと匡さんもその餌食になるだろうな、と思い心配して言った私に、匡さんは少しだけ眉を寄せながらも頷いた。


< 159 / 248 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop