赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


ほぼ毎朝しているプレゼンは未だに成功していないし、麻里奈ちゃんの誕生日プレゼントだと言えば、匡さんは〝用意する必要はない。
ここ一カ月の迷惑料で十分相殺できる〟なんて言い出す可能性すらある。

でも私は、せっかく仲良くなった麻里奈ちゃんに何か贈りたいのだ。

いつも通り九時前に庭に現れた相葉くんの作業を手伝いながら、一体どうすれば……と頭を悩ませていた時、神様がくれたチャンスのようなタイミングで彼が言ったのだ。

『なんか店の周知が不十分だとか店長が言い出すから、俺、今日の午後、これ配り歩かないとなんですよね。いつもあまり歩き回らないから地味にキツイ』

ものすごいタイムリーな発言に目を輝かせて名乗り出て……今に至る。
なんだかんだ頼み込んだら断れない、そして基本外出禁止という私の境遇を若干不憫に感じてくれている相葉くんには感謝するばかりだった。

午前中には戻ると約束し、桧山家の近所のお宅を一軒一軒回りポスティングしていく。

桧山家は高級住宅街にあるため、平日九時半という時間は辺りはとても静かで鳥のさえずりが聞こえてくるほどだった。

毎週末、匡さんは色々な場所に私を連れ出してはくれるけれど、いつも少し遠出した場所なので、こうして近所を歩くのは初めてでとても新鮮だ。

たまに飼い犬に不審者扱いされ吠えられながらも広告を減らしてく。
大学までは当然ひとりで歩き回っていたのに、こうして誰とも並ばずに足を進めることにすでに違和感を抱きつつある自分に笑みがもれる。

同時に、やっぱり少しだけ今の生活に窮屈さを感じていたのだと思い知った。
ただ歩いているだけなのに、自由に行動できることがこんなにも嬉しくてワクワクしている。


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