赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


相葉くんは、間違っても恋だの愛だの言い出さなそうな匡さんが私との結婚を決めたのには訳がある……と言う。私だって本心ではそう思っている。

匡さん側にプラスに働く何かしらの事情があるのだ。

その条件にたまたま私が当てはまったからこその結婚だということは、大学の卒業式、匡さんが私を迎えにきて結婚が現実味を帯びてきた頃から私も理解していた。

教会で初めて匡さんとキスした時も、憧れのブーケトスをしている時も、ケーキ入刀の時も……どんなに浮かれていても、相葉くんに言われるまでもなく本当は頭の隅っこでずっと考えていた。

『匡くん、大好き。大きくなったら私と結婚してくれる?』

匡さんは、そんな、幼い私のプロポーズを真に受けたわけでも、母と雅弘おじ様がノリで決めた許嫁という関係のけじめをとろうとしたわけでもない。

私を選んでくれた理由が、きっと他にある。

そう思ったから、知らず知らずのうちに当てはまった条件があるのならそこから外れないように努力して、さらに、匡さんが望むそれ以外の項目にもピタッとはまるよう精進しようと決意した。

だって、私を選んでくれて本当に嬉しかったから、私だって匡さんにとってプラスになるような働きがしたい。なんでもいいから役立ちたい。

掃除をしろと言うならするし、マッサージの腕をプロ並みに磨けと言うならなるし、匡さんの好みに合ったおいしいコーヒーを入れられるようになれと言うならなる。

全部、喜んでする。

匡さんにとって、誰よりも役に立つ都合のいい女になりたいのだ。そして、ずっと一緒にいたい。


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