赤ちゃんを授かったら、一途な御曹司に執着溺愛されました


今まではただ、匡さんに見合う大人の女性になりたいと思っていた。
あの、赤い傘の女性みたいになりたいという、明確な目標もあった。

でも、匡さんの好みの女性に近付きたい……と意識したことはなかっただけに、立ち上がった壁に早々にぶち当たり、困り果てる。

――匡さんの好みの女性とは。

見た目や年齢、性格どころか、大雑把にわけたところのタイプすらわからない自分にはさすがに愕然とした。

これでよくも〝匡さんが好き! 結婚したい!〟なんて言っていたものだと呆れてしまう。

浮いた話がなく周りに結婚の心配をされていた匡さんの女性の好みを、誰なら教えてくれるだろうと一応考えてはみたものの、適任者は見つけられなかった。

秘密主義というわけではないにしても、匡さんは聞かれなければ自分のことは話さないし、聞かれたところで答えてくれるかというと必ずしもそうではない気がする。

その場面に必要ないと判断すれば、プライベートな質問はバッサリ切るだろう。
結婚式の最中に跡取りの話題を出した祥子さんを一刀両断したように。

そんな匡さんが雅弘おじ様や滝さんに好みの女性についてペラペラ話すとも思えない。そして私は匡さんに関係する人物を他に知らない。

速攻で詰んでしまった……と天を仰いでいた私にチャンスが訪れたのは、その週の土曜日。

リビングで匡さんと一緒に三時のお茶を飲もうとしている時だった。


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