黒猫と竜は白薔薇に恋をする
 見るからに不機嫌そうな学園王は、うんざりとした口調で話す。

「……上から毎日小言を言われる。学園のツートップはいつになったら嫁をとるのか、子孫を早く作れとかな。暁は縁談を全部蹴るし、カナタは不特定多数の女に手を出す。しかも子は作る気ゼロ。もういい加減役目を果たさないと困るんだよ! 俺がな!」


 こそっとカナタが暁に耳打ちをする。


「だってさ。どうする?」

「どうもしない。めんどくさいし、嫌だ」


 しっかりと聞こえてたらしく、目の前に書類らしきものが突き出された。蜂蜜色の紙には長々と何かが綴られておりーー暁は信じられないと言わんばかりに、学園王を睨む。


「……これどういうこと?」

「契約書みたいだけど、本人が承諾しなければ無効でしょ」

「残念だが、これは強制だ。そして代理人の許可も得てるぞ」



 それはどういうことなのか。暁とカナタは互いに顔を見合わせる。


 なんてこともないように学園王はさらりと言う。


「八代とキリエも同意してる。好きに使えと言っていた。異論は認めない、以上」


暁とカナタは思わず沈黙する。


さすがにこれ以上好き勝手はできないだろう。好きに使えとは、学園王にすべて任せるということだ。縁談を蹴り続けてきた結果、これである。


「いいか? これは学園の極秘任務だ。白薔薇の宮に明日からお前たちも住み、白薔薇の姫の専属騎士として仕えること。まだ生まれてまもない、まっさらな状態だ。くれぐれも、頼んだからな」


 念に念を押され、詳しいことは白薔薇の宮にいる騎士に聞け、忙しいから早く出ていけと部屋を追いだされてしまった。


「最悪、疲れた。このあと予定ないし、帰って寝る」


「オレもそうしようかなーっと」



 こうして白薔薇の姫の専属騎士になったのだった。



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