ティアドール
すると、すぐに別の軍人が、長髪の男に近付いて来た。

「閣下!6番目のオリジナルの情報が届きました」
「やはり…人型か」

長髪の男の言葉に、軍人は目を見開き、

「そうであります」

姿勢を正した。

「やはりな」

長髪の男は、廊下の向こうを軽く睨んだ。

(始まったか)

そう心の中で呟くと、長髪の男はフッと笑った。

「今頃になってのオリジナルフィギュアの起動…解せませんな」

軍人は、長髪の男の後ろを歩きながら、考え込んでいた。

「レクイエムの愛され人が、亡くなって三年になる。時期を見ていたのだろう」

長髪の男は、周りに誰もいないことを確認してから、口を開いた。

「水戸の老人が、動き出したのですか!あやつは、宮内庁を抱え込み、陛下をも」

「香川」

少し興奮気味になった軍人を、長髪の男がたしなめた。

「す、すいません。少し興奮してしまいました」

香川は慌てて、後ろを確認した。

「…」

長髪の男は少し、目を瞑った。

「しかしですな〜。水戸の老人が薦めていた武藤のいう男ですが、6番目のパイロットになれなかったようであります」

「!」

「自らの配下に、愛され人をつくるという野望は砕かれたようですな」

嬉しそうに話す香川に、長髪の男は足を止め、振り返った。

「誰が、パイロットになったのだ?」

「そ、それは…まだ、情報が」

長髪の男の鋭い眼光に、香川は思わず怯んでしまった。

「すぐに、調べよ」

長髪の男は前を向くと、再び歩き出した。

「は!」

香川は頭を下げると、来た道を戻って行った。

(パイロットが変わった?)

長髪の男は、眉を寄せた。

(流れも変わるのか)

真っ直ぐ廊下を歩いていくと、突き当たりの壁が唐突に開いた。

「お前は、どう思う?」

壁の向こうは、巨大な格納庫になっていた。

そこに佇む…一機のフィギュア。

「雷電」

それは、オリジナルフィギュアの一つ…亜門型、雷電であった。

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