ティアドール
「こ、ここは…」

コウの頭に、基地を襲撃するフェーンの部隊の様子がよみがえった。

「戦場だった!」

そう思うと、極度の緊張と恐怖が、コウを襲った。

震える体。

その震えは、アルテミスに伝わった。

ぶるぶると震え出すアルテミスを見て、二機のブシは後ずさったが、ガルは動かなかった。

「今度は、何を仕掛ける?」

ガルの中で、河村はアルテミスを見つめながら、どんな攻撃にも対応するように身構えていた。

しかし、河村の考えは徒労に終わった。

何故ならば、アルテミスは踵を返すと、基地の外に向けて走り出したからだ。

「オリジナルフィギュアが、逃げる!?」

それは、河村の予想外であった。

「な」

一瞬、対応に遅れてしまった。

「ま、待て!」

フェンスを破壊して、基地の外に出たアルテミスを見て、腰が引けていたブシのパイロット達がよみがえった。

一気にブースターを点火させると、アルテミスとの距離を詰めた。

「逃がさんぞ!」

ビームマシンガンは奪われていた為に、二機のブシは高周波ブレードを抜いた。

「だけどさ」

河村は、溜め息をついた。

「逃げたからといって…性能差が埋まる訳でもないし」


突然、アルテミスは足を止めると、二機のブシに向かって襲いかかった。

両手に伸びている爪で、ブシの腕を一瞬で切り裂いた。

「やっぱりね。さすがだわ。戦いに不慣れなはずなのに、パイロットのイメージを感じ取り、最善の動きをしてみせている」

河村は、目を細め、

「これが、自己進化するというオリジナルの一端か」

拳を握り締めた。

その時、別回線が開いた。

「河村少尉。状況はどう?」

聞こえてきた声は、有馬のものであった。

「よくないです。機体の右腕は損傷してしますし」

「今から、こっちのフィギュアを出すわ。テラの攻撃に、謎のミサイル攻撃。沖縄基地を、オリジナルフィギュアを守る為に、近くにいた我々が、援護に向かう!」

「え!!」

有馬の言葉に、河村は思わず驚きの声を上げた。


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