契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「これから仕事なんだから、しっかりしないと」

 自分を叱咤して朝食の準備を進めた。


 それから出勤し、国内線三便の乗務を無事に終えた私は、最後の便で一緒だった真琴と空港近くのバーに来ていた。

 真琴とは社内で会うことも多く、週に一~二回は夕食をともにしていた。そこで誠吾さんとのことを逐一報告するのが最近の日課となっている。

 今日もカクテルとおつまみを注文するや否や、誠吾さんとはどうなのか、私の気持ちの変化はないのかと根掘り葉掘り聞かれた。

 そんな真琴に隠すことなくすべて打ち明けると、顔をしかめた。

「え、どうして早く告白しないの? もう凪咲、完全に好きじゃん」

 簡単に言う真琴を恨めしく思うものの、至って正論だから言葉に詰まる。

 この一ヶ月、自分の気持ちと向き合ってきた。悔しいけれど真琴の言う通り離婚後、誰も好きになれなかったのは、私の中で誠吾さんの存在が大きく残っていたからだと思う。

 だから再会した時、誠吾さんに忘れられていたことにショックを受けたんだ。
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