契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 ため息をひとつ零し、まずは注文を済ませてから凪咲にメッセージを送る。さり気なく一昨日、館野キャプテンとなにか話したみたいだけど、変なことを言われたり聞かれたりしていないかと。

 だけど一向に既読が付かない。度々スマホを確認していると、館野キャプテンは呆れ気味に言った。

「鮎川ちゃん、今は空の上なんじゃないのか?」

「そうかもしれませんね」

 一度スマホをポケットにしまい、残りのソーキそばを一気に啜る。

「本当に真田は鮎川ちゃんのことが大好きなんだな」

「えぇ、そうですよ」

 隠すことなく答えれば、館野キャプテンは「これだからモテる男は」と言って茶化す。

「まぁ、早くに本気で好きになれる相手と出会えたことはいいことだ。あーあ、俺にも早く運命の相手が現れないかな。結婚したい」

「え、館野キャプテンって結婚願望があったんですか?」

 社内きってのプレイボーイとして有名で、四十歳になった今も特定の相手などいないのに。

 意外で思わず聞き返せば、館野キャプテンはムッとなる。
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