契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「たしかにそうだな。結婚と同時に離婚を決めたんだから。……もちろん今度の結婚は離婚なんてしないぞ」

「当然です!」

 離婚なんて絶対にしない。誠吾さんとは一生家族として幸せな未来を生きていきたいもの。

 ムキになって言い返せば、誠吾さんは「冗談なのに」と言って笑う。

 誠吾さんとはこうして何気ないことで笑い合って、幸せに生きていきたい。そう心に強く願った。


 五ヶ月後――。

「再婚する際は、結婚式を挙げてほしいとお願いしたけどまさかこんなに早く実現してくれるとは思わなかったわ」

「私も正直、本当に間に合うのか不安だったよ」

 新婦控室で純白のウエディングドレスに身を纏い、つい母に愚痴を零してしまう。

「お友達や会社関係の人もびっくりしたんじゃない?」

「うん」

 真琴には誠吾さんに想いを伝えたことと、結婚式を挙げることを同時に話したからだいぶ興奮していた。

 館野キャプテンには「真田、どれだけ我慢できないんだ?」と大笑いされ、会社の人たちはただ驚きっぱなしだった。

 でも私たちが結婚していると噂が流れていたから、噂は本当で私が入社し、仕事に一区切りつくまで結婚式は挙げなかったという話に収まった。

 私と誠吾さんが再婚だということは、真琴と館野キャプテンしか知らない。
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