契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 五年前に婚姻関係にあった時期から、私は誠吾さんがどんな仕事をしているのか知らなかった。期間限定の関係だったし、知る必要もないと思った。

 だから入社前に、ミーハーな一面のある真琴から〝パイロットの王子様〟と呼ばれているパイロットがいるとは聞いていたけど、それがまさか誠吾さんとは夢にも思わないじゃない?

「え? なにその反応は。まさか噂は嘘で、全然カッコよくなかったとか?」

「ううん、そんなことはないと思う」

 誠吾さんは昔から誰が見てもカッコいいと思う。五年の月日を経て二十九歳になった彼はよりいっそう大人の男になっていて、パイロットの制服がとてもよく似合っていた。

 彼が社内広報誌に載ったり、テレビや雑誌の取材が殺到したりする理由にも納得がいくほどに。

「やっぱりそうだったんだ! あー、私も早くパイロットの王子様と一緒の便に乗りたいなぁ。それにしてもパイロットでイケメンで、愛妻家でしょ? どれだけパーフェクトなの? 奥さんが羨ましいなぁ」

「そうだね」

 相槌を打ちながら思い出すのは、彼の左手薬指にはめられていた結婚指輪。
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