契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
「凪咲のおかげでじいさんに最初で最後の恩返しをすることができたし、なにより凪咲と同じ理由でパイロットを目指した俺としては、なんとしてでも凪咲に自分の夢を叶えてほしかったんだ」

「え? それじゃ誠吾さんがパイロットになった理由って……」

 そこまで言いかけると、彼は頬を緩めた。

「飛行機が好きで、ずっと世界中を旅したかった。いつしか大好きな飛行機を操縦したいという思いが強くなってさ。……周りに反対される中、じいさんだけが俺の夢を応援し続けてくれたんだ」

 だから誠吾さんは最後に祖父の願いを、どんな手段を使っても叶えてあげたかったんだ。

「状況は違うけど、せっかく叶えたい夢を見つけることができたのに、家族のせいで夢を叶えることができないかもしれない凪咲が自分と重なってさ。俺の願いを叶えてくれる代償として、俺も絶対に凪咲に夢を叶えさせてやろうって誓ったんだ」

 そんな風に私のことを思っていろいろと力になってくれたんだ。
 誠吾さんに思いに触れて、涙が溢れそうになる。

「困ったことや悩みがあればいつでも相談にのる。元夫婦のよしみで同僚としてこれからよろしくな」

「こちらこそです」
< 57 / 236 >

この作品をシェア

pagetop