契約夫婦を解消したはずなのに、凄腕パイロットは私を捕らえて離さない
 この日はフライトすることなく出社スタンバイは終了し、帰りにスーパーに寄って食材を買い込んだ。

 帰宅後すぐに調理に取りかかり、ちょうど作り終えた頃に真琴が来て食事をしながら事の経緯を説明したわけだけれど……。
 いつの間にか真琴の箸を持つ手は止まり、何度も目を瞬かせた。

「ちょっと待って。まったく予想していなかった話をされて頭がついていかなくて……。少し整理する時間をちょうだい」

 そう言って真琴は頭を抱えた。

 両親のこと、誠吾さんとの出会いに結婚と様々なことがあった。自分でも改めて真琴に話してみて、波乱万丈な人生を歩んできたと思うんだから、真琴はもっと感じたはず。
 少し経つと真琴は盛大なため息を漏らした。

「ごめんね、まるでドラマのような話でびっくりしちゃって。……大変、だったんだね。自分を売るしかないとまで追い詰められていたんだから。そんな時に助けてくれた真田さんはヒーローだったね」

「うん、私もそう思う」
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