君との恋の物語-mutual dependence-
卒業7
寒いなぁ。

目覚まし時計の音で目を覚ました私は、まず最初にそう思った。

まだ夜明け前。

起きてすぐのまだ起きていない頭で考える。

なんでこんな時間に目覚まし鳴るの…?




…!


そうだ、起きなきゃ!今日だけは!

飛び起きるようにしてベッドから降りた。

階段の上から下を覗くと、リビングの電気がついている。

そっか。お母さん、起きてくれたんだ。

少しホッとして階段を降りた。

リビングに入ると、お母さんはキッチンにいた。

『おはよう。ちゃんと起きたわね。』

「うん。」

眠いけど。

「あの、ありがとうね。」

『え?なに』

「んん、なんでもない。」

『もう。いいから顔洗ってらっしゃい。時間ないんでしょ?』


顔洗って、まずは朝ごはんを食べた。

それから歯を磨いて着替えて化粧して。

ここまではあんまり普段と変わらない。

でも、今日は特別な日。

『忘れ物しないでよ?ただでさえ時間ないんだから。』

わかってるよ。ありがと。

「うん、大丈夫。じゃぁ、行ってくるね。」

『いってらっしゃい。それから、ちょっと早いけど、卒業おめでとう。』

不覚だった…ちょっと涙が出そうになった。

「あり…がとう」

震える声でなんとかこれだけ言った。

『泣いちゃダメよ。せっかくお化粧したんだから。』

もう、誰のせいよ。

「ん。行ってきます!」


そう、今日は特別な日。



卒業式だ。



家を出て、駅に向かった。

髪のセットをお願いしている美容室は、幸い駅前で、そのまま電車に乗れる。

お店のに着いたら、もう中は明るくて、既に何人かは着付けを終えてセットに入っていた。

『いらっしゃいませ。山本様』

顔見知りの私は直ぐに奥に通してもらえた。


着付けもセットもそれなりに時間がかかったけど、知ってる店員さんだったからおしゃべりしてくれた。

予定通りに終わったのでそのまま電車に乗って大学に向かった。

祥子や由美とは駅で待ち合わせをしていた。

『あ!さぎりー!』

先に祥子が見つけて話しかけてくれた。

由美はまだきてないみたい。

「おはよう!祥子、袴似合うね!」

ほんと、すっごい綺麗。

『さぎりもよく似合ってるよ!』

なんて会話をしていたら、由美も来たんだけど、私達は言葉を失った。

「由美?だよね」

『なによ。そんなに似合わない?』

照れ笑いする由美。

「いやいやいやいやい似合いすぎなの!すっっっっごい綺麗!」

いや、本当に。元々整った顔立ちだけど、いつも化粧っ気がなくて服装もさっぱりしてるから…。

いやそれにしても綺麗。

普段からもっとおしゃれしたらいいのに。

『ちょっと、やめてよ。』

ますます照れる由美。

可愛い…。可愛すぎる。


そして、なんだかずるい。



『いいから、行こ!今日は遅れるわけにいかないんだから!』

なお照れ隠しする由美。

「うんうん、行こう!」

こうして私たちは、卒業式に向かった。
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