ゆっくり、話そうか。
本人にしか分からない。
万智もガッツポーズで返し、「頑張ろうね」と奮起する。

「俺も頑張るから、万智!」

隣にいた尚太は何がなんだかよく分かっていないが、一緒になってガッツポーズしていた。

「それは…なんの真似?」

一人、完全についていけていないのが日下部。
今までは話したこともないやよいに興味などなく、中間試験の時はやよいがそんなことをしているのさえ知らなかったものだから、今回目にして度肝を抜かれていた。
最近はなんだかんだで一緒にいることも増え、時おり放課後も少し残ってこの四人で雑談するようになっていた。
だから、以前よりやよいがどんな人物かが分かっていたつもりだったのだが。
どうやらまだまだ甘かったらしいと、日下部にはまたある種の興味が生まれていた。

「や、別に、なんもない、で?」

日下部に話しても絶対理解されず、意地悪く笑ってはからかわれると分かっていたやよいは、何事もありませんを全力で装ってみる。

「あれ?日下部くんは初めて?」

「あ、ちょっと万智…」

不穏な足音を察知し、言わんといて、と言おうとしたけれど、

「これはねー、やよいの試験前のおまじないみたいなもので、こうやって前に積んでこれからこの山のようなプリントや課題をこなすだけの力を呼び起こしてるの。やよいの覚醒っ!これをすることで成績が上がるの!」

ちょっと興奮気味に万智から説明されてしまった。
他の誰かから自分のしていたことを解説されると、こんなに恥ずかしいものなのか。

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