ゆっくり、話そうか。
私やったらその場で自害…は、せんな。

白装束で切腹する自分の姿が浮かんだが、あまりに非現実的なのでリセットする。
まず誰かに水をぶっかけたり八つ当たりする自分も想像できない。
そしてそんなことは頼まれてもしないため、もしかりに自分ならの世界も無かった。
けれど、言われた言葉の痛さは想像できるため、メンタルは大丈夫だろうかとは思ってしまう。
万智の話では、周りはけっこうな人だかりだったようだから。
ざまあみろ、とも思えず、やよいの心は複雑だった。
やよいに水をかけたことは伏せられ、尚太を怒らせた彼女達がただやり込められたという図式となっている。
名誉の回復をしてやりたくても、回復できるものもないというのがまた痛い。

やよいとしては二人の気持ちが嬉しくて、気遣ってくれたことも含めて感謝しかなかった。
万智と尚太に恥をかかされ、仕返しするかと思われたが、意味のないことだと思ったのか男である尚太に恐れをなしたのか、今のところは何事もなく済んでいる。

担任からも何があったのか、頭から水を被った理由が花壇の水やりでは辻褄が合わないため、担任に聞かれはしたが、手が滑ったですと押し通した。
面倒なことはごめんだった。
水をかけられたとなれば誰だとなり、みんなで交えた話し合いがなされるだろう。
冗談じゃない。
そんなことに付き合いたくない。 
それなら授業もサボったとして処理される方がよっぽどましだ。

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