夏樹先輩、好きでした。


椎菜に以前、『花梨の気持ちは、伝えなくても良いの?』と聞かれたとき。

私は、『もう良いんだ』と答えた。


エリカさんという彼女がいる夏樹先輩に告白したとしても、フラれることが目に見えているから。


私はもう先輩に、面と向かってこの気持ちを伝えるつもりはないと。


そう、思っていたはずなのに……。


『花梨ちゃん、おはよう!』


頭の中を過ぎったのは、先輩の明るく優しい笑顔。


再び先輩と同じ時間を過ごすうちに、私の気持ちは変わってしまったのかもしれない。


本当にこのままずっと、先輩への想いを心に閉まっておいても良いの?


我慢したままで良い?


……ううん。良いわけがない。


やっぱり、後悔だけはしたくないから。


先輩と両想いだとか、エリカさんから先輩を奪おうだとか、そんなことは思わない。


本当に純粋に、この想いだけでも先輩に伝えられたら……。


彼女がいる先輩に、迷惑をかけない形で告白するには……そうだ。


私は、先輩の高校卒業式の日。


一か八かの、賭けに出ることにした──。


< 47 / 60 >

この作品をシェア

pagetop