仮面王子とのメモワール


「王子様はそんなとこ座らないよ」

「誰が王子様だ。黙ってろ」



口調が荒い。イライラしてる。

けど、これが完全な律紀の素顔だ。



「口悪い」

「お前の前で猫被る必要ねぇもん」


「二重人格」

「バカ。俺は器用に使い分けてんの」


「……理由、教えてくれないの?」

「……お前には関係ねぇからな」


ふぅ、と律紀が息を吐く。



そして。



「……悪かった」



小さく、小さく、呟かれた一言。


それが今のやりとりのことなのか、日中の教室での会話のことなのか、……それとも、2年前のことなのか。



真意はさっぱりわからないけれど、この言葉も彼の本意のように思えた。


深くは聞かなかった。なんとなく、聞けなかった。




「私は、許してないよ」


だから、私も本音を伝えた。


律紀は何も言わなかったけれど、たぶんわかっていると思う。


なんだか、やっと律紀が帰ってきたのを受け入れられた様な気がした。


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