仮面王子とのメモワール


あぁ、ダメだ。今のじゃさすがにシュウちゃんに怪しまれる。


どうしよう、情けない。

たかが雷の音で、こんなにビクビクするなんて。




「……ったく、やっぱりか」



そんなとき、背後からよく知るその声が聞こえた。


悔しい。

すごく悔しいけど、助かったとも思ってしまった。



「バカが」


その言葉が聞こえたのが最後。


誰の声かなんて顔を確認する間もない。


後ろからスッと頭から被せられたのは、大音量の音楽が流れているヘッドホン。


「……ごめん、ありがと」

小さく呟いた言葉が本人に聞こえたのかはわからない。


私の耳には音楽しか聞こえなくなっていて、ただ目の前の未央とシュウちゃんが驚いた顔をしているのだけがわかった。



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