妖怪探偵☆雪女の雪華が参る!! 「俺の嫁になれ」と美鬼の茨木童子に迫られちゃって、私そんなの困ります! ――の巻。
第1章 消えたひょうたんの謎を追え

第1話 夏が好き

 私は、夏が好きだ。
 なんだか夏ってわくわくしない?
 一年のうちに訪れる四季のなかで一番太陽が眩しくて。
 海に入って泳いだり、楽しい夏祭り、七夕、肝試しに花火大会やキャンプ……。
 夏にはイベントが目白押し。
 日が長いから、冬よりたくさん遊べるもん。

 ちょっと開放的で、はしゃいだ気分になるの。

 遠くに住んでるおばあちゃんに「夏が好き」って言うと、いつもびっくりされちゃうんだけどね。
 おばあちゃんは「暑さは大敵じゃ」ってガタガタぶるぶる怯えて震えるんだけど。
 
 私の母方の親戚はちょっと変わってる。
 夏が苦手な人が多いんです。
 ふっふーん。それは実は私たち一族には、秘密があるから。
 なかでも私は特殊、かなり珍しがられてる。

 白状しちゃうよ?

 だって私、ね――。
 妖怪『雪女(ゆきおんな)』なんだ!
 えへへ。

 ねぇ?
 びっくりしたかな?

 私のママは雪女、パパは人間なんだよ。
 でもパパはただの人間じゃないの。玄武っていう神獣の生まれ変わりなんだ。

 神獣っていうのは、古来から日本を守ってる力を持つんだって。
 ま〜、正直なところ、まだまだ子供の私には難しいことはよく分かんない。
 複雑かつ、詳しい事情は、大人たちに説明されてもすぐには飲み込めなかったりするのよね。

 私は半分人間、半分あやかしの半妖ってわけ。
 だけど、雪女って一族はね、大昔は村里に女性ばっかりだったの。
 結婚の契り? を交わすのは人間が多かった。
 異種の妖怪と結婚すると血が薄れる。どちらの妖力や特徴が色濃く出るか分からないんだって。
 それで大昔は素性を隠し人里に降りてきて、結婚相手を探したらしいのよ。
 生まれた子供が女子なら雪女の里へ連れ帰り、男子なら人間の里に置いてゆく。
 ……っていうか、自分の子供を手放さなくちゃならないなんて信じらんない。
 私、おばあちゃんからその話を聞いた時は、怒りがふつふつと湧いてきたし、哀しくて仕方がなかった。
 これが誰も分からないぐらいずっと続ていた妖怪雪女の掟だったんだって。
 ところが、時代が変わるとともに妖怪世界にも新風が吹き荒れた。
 妖怪だって、ゲームもするしスマホを持っていじくってたりするんだ。
 一部の妖怪は人間社会に上手く溶け込んで、人間みたいに暮らしてるのよ。

「いつまでも変わらないものなんてない」
 これはママの言ってること。

 私のママはパパに恋をした。
 大恋愛の末に結婚して、今は人間世界で暮らしてる。

 私は雪女。
 名前は佐藤雪華(さとうゆきか)っていうの。
 ねぇねぇ、私もいつか誰かに恋するのかな?

 私は家の庭に棲み憑いたちっちゃな妖怪に話しかけてた。
 相手は炭で出来てるらしい体を持つ小鬼だ。
 大きなくりくりな瞳をキョロキョロとさせて、私を仰ぎ見ている。
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